制作への想い

癒しや旅をテーマに、日常から広がる架空の世界を、ローレフォトと言う手法を使って制作しています。

小さい頃は毎日が驚きと発見に満ちていたと思い、もう一度あの頃のように心躍る自分に戻るための入口を作っています。

目の前にあるものをただそのままに見るのでなく、 そこに流れた時間に想いを馳せたり、
別物に見立てて想像した世界をビジュアル化しています。

積み重なった時間や空間の広がりを表現することで、
今ここにいることの大切さと次へのいい予感を描きたいと思っています。

制作の背景

デジタル化が進む中、写真で何ができるかと模索し、約12年前のスタート時には、五感に訴える写真をと、
写真に音、味、ことば、香りをつける展示会をしました。

その後、印象派時代の絵画と当時の画家たちの苦労を知り、ただ見たままを綺麗に撮影するのでなく、
自分自身や被写体の内面、感じたことを表現する方法、絵画のように深みのある世界を表現する方法を
自分なりに追い求めてきました。

2014年~2016年UnioMysticaシリーズ
2017年~現在 Lostシリーズを制作中

シリーズコンセプト
Unio Mysticaシリーズ

これまでの自分から脱出して自由になる、解放を意味した作品です。

写真に写っているモノ、場所本来の役割から解放させ再構成することで架空の場所を作り、
ここではないどこかへ行きたい、変わりたいという、自身の現状と、次への希望を表現しています。

2016年 国際フォトアワードIPAでHonorableMention
2017年 写真集NewBirth出版

Lostシリーズ

失ったものを見つける自分探しからスタートした作品です。

小さいころに感じた未知と未来へのワクワクに繋がる、入口を表現しています。
作品には半透明のシルエット人物が登場します。

2017年 国際フォトアワードIPAで、HonorableMention
2018年 WPCワールドフォトグラフィックカップの日本代表チーム作品に選出

ローレフォトの解説

ローレフォトは、さまざまな 場所で撮影した写真を絵画の ように再構成した作品のこと です。
再構成することで、モ ノや場所について本来それが 持つ役割を解放し、それらと 新しく出会い直すきっかけに なると考え制作しています。
従って、ローレフォトを構成 しているのは、私たちの身の 回りにあふれるありふれた 日常ですが、そのカケラを組 み合わせることで架空世界 を作っています。

日本、ドイツ、イタリア、フ ランスなどで取材した5万枚 以上の写真を材料に、パソコ ン上で色や質感、線などを再 構成し、10~30枚を重ね 合わせ、
1作品あたり約1週 間~1ヶ月かけて制作してい ます。

解放のこと

私たちの身の回りは、何かの目的のために作られたモノや場所で溢れています。

そして、私たちはいつの間にかそれらのことを役割や目的以上には感じなくなっています。

例えば、ありふれたコップのフォルムや質感について、改めて美しいと眺めることがないように。

そこで私は、当たり前に存在する身の回りのものをその質感や色フォルムに注目し、

本来それが持つ役割や重力から解放することで、眺めてみたい架空の風景として再構成しました。

時間のこと

ローレフォトには複数の時間が含まれています。

写真は一つの時間を切り取ったもので、
それを何枚も重ねることで、ローレフォトを作るためです。

記憶の中の過去、現在、未来は一本の線ではなく、
カケラとして私たちの中に存在していると、私は考えています。

例えば、風化してこけ蒸した建物は、そこに流れたであろう果てしない時間を想わせます。

向こうへ続く道や、ドアや階段は、その先へ広がる未来を意味しています。

空間について

先へ続く場所や、スケール感の大きな空間は、非日常的で、
私たちに新しい予感や、次への冒険心を感じさせてくれます。

旅をして壮大な景色に触れたとき「自分はなんて小さな存在だろう」と気づき、
小さなことに囚われず、前向きな気持ちになることがあるように、
ポジティブな気持ちを促進するための空間構成をしています。

人物

UnioMysticaシリーズとLostシリーズの一部に、同じ人物が登場します。
何者でもない、ニュートラルで無個性な人物を描いています。

作品は外から眺めるのでなく、作品の中に見上げる人物を配置することで空への視線誘導と、
作品のスケール感を伝えるよう構成しています。

この先のいい予感を25%の余白とし、
75%の半透明またはシルエットの人物にしています。